彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 大切にされていたことが、こんなにも嬉しいなんて知らなかった。

 それなのに、その記憶を自分だけ持っていないことが、どうしようもなく悲しい。

 言葉にしてしまえば、全部こぼれてしまいそうで、何も言えないまま唇を引き結ぶ。

 隣にいるのに、先生だけが知っている時間があるのだと実感して、胸の奥が静かに疼いた。

 「あれ? 吉岡さん……?」

 不意にかけられた声に、はっと顔を上げる。

 「あら、先生まで?」

 聞き覚えのある声に、一瞬遅れて気づく。

 「梅木さん……!」

 思わず表情が緩んだ。

 退院したばかりとは思えないほど元気そうで、あのときと変わらない明るい笑顔を向けてくる。

 「こんなところで会うなんて、びっくりねぇ。あらやだ、お似合いじゃないの〜」

 くすっと笑って、意味ありげに先生へ視線を送った。

 「先生、ちゃんと捕まえたの?」

 相変わらずの梅木さんは、先生にウインクした。
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