彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 明るくそう言うけれど、本気だということが、しげぴーの目を見てわかった。

 全部をなかったことにするわけでもなくて、でも踏み込みすぎない距離を選んでくれているのが伝わってきて、胸の奥がじんわりと熱くなる。

 「……ありがとう、しげぴー」

 やっとそれだけ言うと、

 「もう、自分責めるのやめろよ。吉岡は何も悪くない。……ちゃんと幸せになれよ」

 しげぴーは笑って、私の頭に手を置いた。

 「じゃ、帰るわ」

 と短く言い、振り返らずに歩き出す。

 呼び止めようか、一瞬だけ迷って――やめた。

 去っていく背中を見送りながら、ゆっくりと息を吐く。

 しげぴー……。

 視界が微かに揺れる。

 ………ごめんね。

 ………ありがとう。

 堪えていたものが一気に溢れてくる。
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