彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 「……綺麗だね」

 後ろから声が落ちた。

 振り返る前に、抱きしめられる。

 どちらのものかわからない心臓の音が、大きく重なる。

 優しく回された腕に少し力がこもり、頬に顔が寄せられる。

 「ひより……」

 絞り出すような声に、胸が締めつけられる。

 「はい……」

 「………ずっと、こうしたかった」

 さらに強く抱きしめられる。

 そのまま、ゆっくりと身体の向きを変えられる。

 近すぎる距離に、息が止まる。

 見上げると、熱を帯びた瞳と視線が絡まった。

 その瞬間、唇が重なる。

 啄むように、味わうように、少しずつ深くなっていくキス。

 腰も頭も引き寄せられ、思考が溶けていく。
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