彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 先生の少し大きな部屋着を借りてリビングに戻ると、先生がこちらを見た。

 一瞬の沈黙。

 「……じゃあ、俺も入ってくる」

 すれ違いざま、ぽん、と頭に手を置かれる。

 そのまま浴室へ向かう背中を見送りながら、大きく息を吐いた。

 ずっと心臓がうるさい。

 用意されていた水を一口飲んで、ソファに座る。

 浴室から微かに水の音が聞こえる。

 その音を意識してしまって、落ち着かない。

 ソファに座っていても、そわそわしてしまって、何度も姿勢を変える。

 それでも、落ち着かない。

 私……間違ったかな。

 告白して、そのまま家に来るなんて。

 少し冷静になって、自分の行動を振り返っていた。

 しばらく同じことを何度も頭の中で繰り返していると、ふと、窓の外に目が向いた。

 引き寄せられるように近づいて、夜景を見下ろす。

 綺麗……。

 ここに来て、初めて深く息が吐けた気がする。

 現実離れした空間に、夢みたいだと思った、そのとき。
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