彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません
勘違いはしないように
日曜日。
あの後帰ってすぐに、先生から謝罪のメッセージが届いた。そしてやり取りをするうち、この日曜にデートすることが決まった。
約束の時間より少し早く着いてしまって、私は駅前のベンチに腰掛けていた。
吐く息が、うっすら白い。
今朝は、なんとなくいつもより丁寧に身支度をした。
アイボリーのリブニットに、やわらかい色味のロングスカート。
上からベージュのコートを羽織って、首元には薄手のストールを軽く巻いている。
髪も、いつもより少しだけ整えてきた。
――別に、深い意味なんてないよね。
心の中で小さく言い訳しながら、私はスマホを握り直す。
画面に浮かぶ時間と通知を、何度も確認してしまう。
——デート。
瀬名先生と。
職場の人。年上。しかもドクター。
どう考えても落ち着かない要素しかないのに、なぜか、嫌じゃない。
でも、デートと言ってもこれは、ホテルでのお礼だから。ただ、それだけだから。
「……いた」
聞き覚えのある低い声に顔を上げると、
ラフな服装の瀬名先生が、片手をポケットに入れて立っていた。
白衣もスーツも着ていないのに、相変わらず目立つ。
「お、おはようございます」
「おはよう。待たせた?」
「いえ、私が早く来ただけです」
そう答えると、先生は少し楽しそうに笑った。
「真面目だね。可愛い」
か、可愛いって……冗談、だよね?
「……先生、そういうこと普通に言うんですね」
軽く言ったつもりだったのに、
心臓の音はやけに大きかった。
「事実だから」
さらっと言われて心臓が跳ねる。
「じゃあ、行こうか。今日は俺の完全エスコートで」
そう言って爽やかな笑顔を浮かべたままの先生は、私が隣に来るのを待って歩き始めた。
いつもこんな感じなのかな。
こうやってどれだけの女性を落としてきたんだろう。
チャラい。
やっぱりチャラいです、先生。
私は早速振り回されているというのに、
先生はすごく楽しそうだった。