彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

side.瀬名

 
 長時間のオペを終え、最後に手袋を外した瞬間、張り詰めていた神経がゆっくりとほどけた。

 無影灯の下に長くいたせいか、目の奥がじんわりと重い。

 「……ふぅ」

 誰に聞かせるでもなく小さく息を吐き、俺はマスクを外した。肩が鈍く張っている。けれど、この嫌いじゃない疲労感が、今日も仕事をやり切った証みたいで少しだけ気分がいい。

 医局へ戻り、デスクに置いていた缶コーヒーのプルタブを引き上げた。

 プシュ、と乾いた音とともに、ほろ苦い香りがふわりと広がる。

 一口飲んだところで、ようやく肺の奥まで空気が入った気がした。

 ――落ち着いた時に頭に浮かぶのは、やっぱり一人だけだ。

 ……顔赤くして、可愛かったな。

 攻めた時、タジタジになるひよりは、今も昔も変わらない。
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