彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 ひよりに、彼氏ができたと聞いた。

 五年も離れていたんだ。

 そんなの、当たり前のことなのに——

 胸の奥が、思ったよりずっと強く軋んだ。

 ……その頃からだ。

 俺が、少しずつおかしくなったのは。

 誘われるままに飲みに行って、適当に笑って、適当に距離を縮める。

 向こうが期待するような空気を作るのも、正直、難しいことじゃなかった。

 ——どうせ。

 誰と何をしても、心が動くことなんてない。

 どこか冷めたまま、そんなふうにやり過ごしていた。

 けれど、ふとした瞬間に浮かぶのは、決まってひよりの顔で。

 グラスを傾けながら、何度苦笑したかわからない。

 ……ほんと、笑える。

 忘れたくて遊んでるくせに、

 結局——誰といても、ひよりの代わりにはならなかった。
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