彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません
 電気もつけないまま、スマホをコートのポケットから取り出しローテーブルに置くと、リビングのソファに沈み込んだ。

 頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。

 瀬名先生。

 事故。

 逃げた。

 しげぴーの言葉が、一生ぐるぐると回り続けている。

 ……私、事故に遭ったことなんてない。

 事故と聞いて思い浮かぶのは、交通事故だった。

 もちろん、そんな経験はない。

 でも――

 ひとつだけ、思い当たる出来事がある。

 それくらいしか思い浮かばない。

 あれは、大学生の時のこと。しげぴーも大学の時から一緒だし、知っている。

 でも……それが瀬名先生のせいだってこと?

 だってあれは……

 考えれば考えるほど、胸の奥に引っかかる違和感が広がっていく。

 思い出せない何かが、すぐそこにあるような。そんな、妙な感覚。

 無意識にスマホを手に取る。真っ暗な中スマホの画面が眩し過ぎて、部屋の明かりをつけてからまたソファに腰掛けた。

 画面を開いて、連絡先をスクロールする。
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