彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 通路を曲がり、更衣室の前を通り過ぎて、勢いのまま病院を出ていた。

 横断歩道の赤信号で立ち止まる。

 車のヘッドライトが次々と目の前を横切っていく。仕事帰りらしい人たちが足早に通り過ぎていくのに、私だけがその場に取り残されたみたいだった。

 胸の奥がざわざわして落ち着かない。

 さっき聞いた言葉が、頭の中で何度も繰り返される。

 ――アンタのせいで吉岡は事故に遭って……

 ――アンタは吉岡の前から逃げたんだ。

 事故?

 逃げた?

 意味がわからない。

 けれど、確かに私の名前が出ていた。

 信号が青に変わり、人の流れに押されるように歩き出す。

 瀬名先生と私は、過去になにかあったの?

 全然記憶にない。

 どうしてだろう。そんなことある?

 しげぴーは何か知っている様子だった。

 ふたりが話していた「吉岡」はきっと私のこと、だよね?
 もしかすると、違う人なんて考えも頭をよぎったけど、でも、二人に共通する「吉岡」はたぶん私だけだ。

 同じことが何度も頭の中でぐるぐるして、きりがない。
 
 家に帰り着いた頃には、すっかり夜になっていた。
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