彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません


 「でも瀬名先輩、全然諦めなかったんだよ。ひよりが困るくらい、ずっと追いかけてた」

 その言葉に、今の瀬名先生の姿が重なる。

 軽い口調で距離を詰めてきて、余裕そうに笑っているのに、時々どうしようもなく真剣な顔をする人。

 「……じゃあ、あの事故って」

 私の声が少し掠れる。

 真由ちゃんの表情が曇った。

 「ひよりが付き合い始めてから、よく思ってない人がいたの。瀬名先輩のこと好きだった先輩」

 胸の奥が冷えていく。

 「柿谷先輩……」

 名前を口にした瞬間、胸の奥がざわりと揺れた。

 大学の階段。

 張り詰めた空気。
 柿谷先輩の鋭い視線。

 ぼんやりとした断片だけが、頭の奥に浮かぶ。

 真由ちゃんは小さく頷いた。

 「そう。覚えてるんだね」

 「……うん」

 「柿谷先輩が、ひよりに詰め寄ったの。あの日、階段のところで」

 私は無意識に息を止めていた。

 「あの人、瀬名先輩のことずっと好きだったらしくて……ひよりが付き合い始めたことが、相当気に食わなかったみたい」

 テーブルの木目をぼんやりと見つめる。

 確かに、柿谷先輩のことは覚えている。
 学内でも有名で少し気が強くて、綺麗で、いつも周りに人がいるような人だった。
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