月とスッポン  一生に一度と言わず
「仕事モードの白大河は温和とは言わないが、ドンっと構えていて話を聞いては聞いてはくれるが『それで?』とか言って何を言っても却下されそう。今の黒大河は、私の話を一切聞いてくれないし、一言多いし、うざいし、めんどくさいけど、要望には答えてくれる」

「後半に悪意を感じます」
「そういうところです」

まだ納得がいかない顔をしているが、多賀宮へと着いたので、放置でいいだろう。

挨拶を終え、大河が言っていた古墳の方を見てみる。

山だ。わからない。
アプリ地図のようにピンが立っていればいいのになんてくだらない事を考えていると
「ウザいですか?」と首を傾げた大河がやってきた。

クッ、可愛いと思ってしまうのは伊勢神宮の威力だと信じたい。

「ウザいかウザくないかと聞かれれば、ウザいです」

肩で息を吐き、そんなにガッカリする事はないとは思うのだが。
まさか今更気が付いたのか!

「まぁ、思ってる事を全部言えって言ったのは私ですし」

「そうですよね」と嬉しそうに顔を上げるな!
なんか腹立たしい。

「ウザいですけど、イヤかイヤじゃないかと聞かれれば、イヤじゃないですよ。ウザいですけど」

感情の浮き沈みが激しいなぁ、おい。

そんなに一喜一憂する事なのか?私の方が、首を傾げたくなる。

「慶太郎に」と小さな出だしで話し出す。

「『ウザいし、どうでもいい』と言われて、話を聞いてくれないんです」
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