月とスッポン  一生に一度と言わず
そんな寂しそうな顔をされても、イヤそうな慶太郎の顔はすぐに思い浮かぶ。

というより、今のあいつは「海のこと以外どうでもいいだけじゃないですか?」とため息混じりにいれば、「あぁ」と納得顔をする。

「まぁ、海の同じ症状ですけどね」

2人で仲良くため息をつく。

「5月に式を上げて、7月に披露宴でしたっけ?」
「そう聞いています」

深いため息をするから
「何かあったんですか?」と問う。

「今年の冬にヨーロッパへ出張があるのですが。その出張に海も一緒に行って、新婚旅行にすると意気込んでいます」

開いた口が塞がらないとはこの事か?

「信じられない事に、海まで乗り気です。なんなら茜も一緒に行きますか?」
「絶対にヤですよ。何が悲しくて新婚旅行に同行しなきゃいけないんですか!」

「ですよね。なので、止めて下さい。私もイヤです」

何を考えているんだ、あの子は。

と言っても海の考えは手に取るようにわかる。
どうせ何も考えず、一石二鳥ぐらいにしか思っていない。

忙しい慶太郎の邪魔をしたくない。でも、新婚旅行には行ってみたい。
それがいっぺんに叶うなんてラッキー

そんなところだろう。

周りが迷惑だ。
これは説教案件なのだが、あの2人の様子を思い浮かべれば

「でも、冬でしょ。子が出来たとかその話自体が流れそう」

と呟けば、「ありそうで、怖いです」と大河もため息混じりで呟く。

< 14 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop