月とスッポン  一生に一度と言わず
御朱印を頂いてホクホク顔の大河の横から覗き見る。

伊勢の御朱印は、今流行りの色とりどりの御朱印ではなく、印がメインの本来の姿だとなにか読んだ。

シンプルだからこそ美しい。
まさにそんな感じ。

改めて見回せば、伊勢自体がシンプルで本体の姿で美しい。

もう一つの鳥居である北御門越しの外宮を目に焼き付けておく。

“神様の台所”忌火殿と今ないない御厩を横目に
通り過ぎ、火除橋を渡れば外宮参拝の終了だ。

ただ橋を渡っただけなのに、下界に降りてきたと錯覚する。

大きく空に手を伸ばし深呼吸をする。

「さぁ、次はいよいよ内宮です」

移動はちゃんと調べてある。
10分ぐらいづつ出ているはずだとバス停に向かって歩き出す。

が、繋がった手により前に進まない。

また子供じみた遊びを始めたのか?

と大河を見れば「どこへ行くのですか?」と不思議そうな顔をしている。

説明していなかったと「内宮に行きますよ」と手を引き歩き出そうとすれば「タクシーはあちらですよ」と逆方向へと手を引かれる。

「バスで十分じゃないですか?」

抵抗を試みても、大河の力に勝てるわけもなく
「時間は有限です」
と思っと見らしい事を言いながら私をタクシーへと押し込める。
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