月とスッポン  一生に一度と言わず
念願の内宮
初めてに等しいタクシーにドキマギしている私をよそに「内宮までお願いします」と運転手と会話を始めていく。

運転手さんにこの後の予定を聞かれ、呆然としている私に大河が「どうするのですか?」としれっと聞いてくる。

「内宮を参拝してから、横丁でご飯を食べてから猿田彦神社を参拝しようかと思っています」

慌てて答える。
なるほどと運転手さんと一緒に納得するな!

「では、宇治橋の方ですね」

運転手さんが車を発進させる。

「どちらからいらしたんですか?」
「今日は暖かくて参拝日和ですね」

なんてよくある会話をしていれば、あっという間の移動時間。

大河のスムーズな支払いが、どれだけ使い慣れているかがわかる。
初めてに等しいタクシーに緊張している私との差に、なんとも言えない気持ちになる。

年齢も違えば経験値も違う。
社会的地位に関してはてっぺんとどん底。月とスッポン。同じなのは、生物学上、ホモサピエンスと言うことぐらいだ。

私はなぜ大河と対等だと思ってしまったのか?

恥ずかしすぎる。

一流ブランドを何気なく着こなしている大河と、格安ファッションセンターでバーゲンを狙って買う私のどこが対等なのか。

海とだってそうだ。

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