月とスッポン  一生に一度と言わず
神苑を優雅に歩く神鶏を写真に収める。
神苑の奥に柵に囲まれた松の木を目指す。

明治時代に大正天皇が植えた松は、普段見ている松とは違い、天に向かい大きく育っていた。

その大きさを堪能しつつ、これも写真を撮る。
お参り前に写真を撮る事は私のポリシーに反するけど、背に腹は変えられない。

手当たり次第写真を撮れば、自然と大河との距離が空く。それでいい。

火除橋を渡れば、ここからが内宮神域だ。
手水舎で身を清め、心を落ち着かせ鳥居をくぐる。

「神社の“鳥居”は神の使いであるニワトリの止まり木が始まりだと言われているそうですよ」

くぐり抜けた鳥居を見上げながら、大河が呟く。

「それにしては高いですよね。止まるの大変そうですね」

ごく当たり前の事を言っただけなのに、大河は小さく微笑んでいる。

「《式年遷宮で神様が神殿にうつられるときも、
神職が天岩戸開きの故事にならって『カケコー、カケコー、カケコー』と
3 回鳴声をあげながら扇を上から下へ3 回扇ぎ、羽ばたき音を出す、鶏鳴三声という儀式をするそうです。
 ちなみに外宮では『カケロー、カケロー、カケロー』と鳴声が変わり、扇も下から上へ扇ぐそうですよ》」
「へー」
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