月とスッポン  一生に一度と言わず
「日陰は少し冷えますね」
なんて誤魔化してはみたが、イケメンの囁きの破壊力、半端ない。

これは勘違い案件だと確信する。
物質的距離を取ろう。それが唯一の解決策だ。

最後にしっかりと両手を合わせる。

「こっそり取り次ぐって、なんか可愛いですね」

ひっそりと人気のない参道を歩く。
私に追いついた大河が手を繋ごうとしているのをさりげなく回避しつつ会話で雰囲気を誤魔化す。

「大河さんの後ろから慶太郎が囁く的な?」

「どんなイメージですか」
「パーティなんかで、知らん人があたかも昔から知っていますよと話しかけて来て、『誰だよ』って思っているところに『なんとか商事の会長です』と慶太郎が教える構図」

2次元でよくありそうな構図を言ってみる。
大河はふっと鼻で笑う。

「水神は蛇に化身するそうなので、慶太郎が蛇というのは当てはまっているかもしれませんが」

なんやら呟いている。
これは独り言なのか?会話に参加していいものなのか?

蛇にまとわりつく海を思い浮かべてみる。
あの大きさからすれば、ニシキヘビになるのか?
肩にニシキヘビを乗せた海。

「羨ましい」
「えっ!羨ましいのですか!」

「はぁ?」
「えっ?」

不快顔の大河と目が合う。
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