月とスッポン  一生に一度と言わず
荒祭宮で挨拶を済ませ、古殿地を眺める。
「次にここに宮が建つ前に、また来れますように」
とそっと手を合わせた。

「式年遷宮はちょうど10年前に行われました」

10年前、あれから10年も経つのかと古殿地を見ながら思う。

「テレビで放送されたのを覚えてます」
「10年経って、来年から次の式年遷宮の準備が始まります。今頃、式年遷宮開始の許可を天皇に提出する文書を作成しているところかもしれませんね」
「10年近くかけて」

外宮、内宮の建物を全て建て替えるのだから、それぐらいかかるのか。
1人納得する。

「《式年遷宮の始まりを告げる式典は、遷宮で使うご用材の伐採作業の安全を祈る“山口祭”です。
その1か月後、木曽の山奥で行われたのが“御杣始祭”が行われ、ご神体を納める器を造るヒノキを切り出す行事で、左右にならぶ2本のヒノキを選び、3方向からおのを入れる古くから伝わる技術で切り進めます。
 また、式年遷宮では、社殿だけでなく、五十鈴川にかかる宇治橋も新しく作り替えますので、ご神体が移されるまでの間、およそ30の行事や祭典が行われそうです》」
「ほぇ。そりゃ準備だけでも10年かかるね」

荒祭宮を後にして五丈殿を目指して歩き出す。

「《式年は定められている年の意味で、遷宮は神社の本殿の造営または修理の際に、神体を従前とは異なる本殿に移すことを言います。
つまり、一定の年限をもって社殿を造り替え、旧殿の神儀を新殿に移すという事です。
神社によって異なりますが、20年から30年での祭事が多いそうです。
まぁ、出雲大社は60年なので、特別な決まりなないかと思いますけどね》」
「へー」
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