月とスッポン  一生に一度と言わず
忌火屋殿 を通り過ぎ、五丈殿の横にあるしめ縄で囲まれた石に人が集まっていく。

「あれは?」
「《四至神ですね。神域の守護神で、四至、すなわち神域の四方の境界を守護する神です。
四至神に対して祭儀を奉る祭壇で、社殿を持たない神社であり、磐座祭祀の形態を残しているそうです》」
「いわくら?」

「《磐座とは、神道において神が天下る岩のことを意味で、基本的には巨石を指す事が多いそうです。
神道はもともと社殿を持たず、山深くに位置する大きな岩に注連縄を張って磐座とし、ここに神を出迎えたことが原始的な姿だそうですよ。
 ちなみに江戸時代までは、神の依り代として1本の桜木、桜大刀自神が祀られており、“桜宮”と呼ばれていました。この桜大刀自神は別名“木華開耶姫神”と呼ばれ、絶世の美女と謳われ、桜の語源とも伝えます。
 富士山の上空から桜の種を蒔いたという逸話があり、平安時代初期に書かれた『竹取物語』のかぐや姫のモデルとも伝わります。
富士山周辺には、かぐや姫が月ではなく富士山に帰ったという伝承が残ることから、かぐや姫と木華咲耶姫は共に富士山の女神とされています》」
「富士山ですか」

「一緒に行きましょうね」
「5合目までなら」

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