月とスッポン  一生に一度と言わず
主のいない内御厩、外御厩を通り、参集殿を横切り、大山祇神社・子安神社までやってくる。

人気のなさが寂しくもあるが、伊勢の神秘性を引き立てている気もする。

「これで一通りでしょうか?」
「そうですね。一通り回りましたね」

宇治橋まで辿り着けば、満足感と終わってしまった寂しさが混じり合う。

大きく息を吐き、これで最後と心を決めて、鳥居を潜ろうと一歩を踏み出す。

「鳥居を潜る前に、あそこから見る宇治橋はぜひ見てほしいと言われましたので」

大河が私の手を引き、坂道を降れば、宇治橋を横から見えるスポットに案内してくれた。

「めっちゃいい感じじゃないですか!」

寂しい気持ちを吹き飛ばす写真スポットに、スマホを取り出す。

全体像、橋の細部と写真を撮っている。
橋脚が綺麗に入るアングルを探していれば、宇治橋の手すりの間からこちらを覗く男の人と目が合う。

驚いた顔をしたと思ったら急に立ち上がる。
こちらを指差し「茜!」と呼ばれ、声の主の顔を見れば

「トア?」

お互いに駆け寄った。
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