月とスッポン  一生に一度と言わず
落ち着きを取り戻し、“茜”と“海”、“彩綾”という聞き覚えのある名前に記憶の糸を手繰る。

「佐山 茜です。パパのお友達?だよ」
「やまだ りゅうへい 3さいです」

3本なのか4本なのか、微妙な3は愛嬌で

「お名前言えるの!すごいね」
「りゅうくん、おにいちゃんだから」
「お兄ちゃんなんだ」

「うん。ままがだっこしてるのが“たいちゃん”。まだあかちゃんだから、おはなしできないの」
「そうなんだ」
「でも、あるけるんだよ」
「すごいね」

龍平と視線を合わせながら、拙い会話をしてくれているだけで、茜がいい人に見える。

「ってか、なぜ友達で疑問系なんだよ」

ほのぼのとした会話を翔空が遮る。

「子供ができた事の報告がないのに、友達なのかな?と。
ってかうちら友達じゃなくない?友達っていうより、戦友?同士?」
「まぁ、友達ではないな」

2人は納得したようで頷いている。

「ままのなまえは“りか”で、ぱぱは“とあ”っていうんだよ」

2人の会話に割り込む龍平にイヤな顔すらせず

「ママとパパの名前も知ってるの。凄いねぇ」

褒められた龍平はご満悦な顔になっている。

「前に言ってた人?」

翔空からサバイバーだと聞いていた。
その中で同じ境遇の“茜”と母子家庭の“久城彩華”と“海”親子が同じアパートで手を差し伸べてくれたから生き延び、将来の目標までできたのだと話してくれた。

「そう」

翔空が少しだけ真剣な眼差しで頷く。
それだけで、彼女が翔空にとって大事な人なのだとわかる。

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