月とスッポン  一生に一度と言わず
予め検索をかけたにも関わらず、何もヒットしないのが怖い。何もなかったとしてもいいように準備はしてきたが、門を潜ればなんとやら。

今まで快走な走りを見せていた翔空も、スピードが見るからに落ちている。

「本当にここでいいのか?」

と声が聞こえたが、私も「たぶん」としか言いようがなかった。

建物が見え、ホッとする。ここでなくても、聞ける人がいると思うだけで安心できた。

翔空と目が合い、頷きあう。
違ったら、「ごめんなさい」でUターンさせて頂こう。

ロータリーに車を回すと、従業員と思われる人がずらっと並んでいる。

これは『VIPを待っている状態で別の人が入ってきちゃった』1番気まずい図ではないだろうか?

思わず翔空の腕を掴む。それに翔空も気づいたようで、手を重ねてくれる。
少し手前で止まれば、男性が小走りでこちらにやって来る。

慌てて窓を下げると、男性が頭を下げてから「山田翔空様でいらっしゃいますか?」と聞かれ、頷く。

「では、大変申し訳ありませんが、少し前へ移動をお願い致します」

大きなジャスチャーでエントランスまで車を誘導される。

「ようこそ、いらっしゃいませ」

並んでいるスタッフ総出で頭を下げられる。

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