月とスッポン  一生に一度と言わず
このまま車に乗っていてもと降りれば、保護欲を唆る可愛らしい女性が、鈴のような声で
「お待ちしておりました」と翔空の元へと歩み寄る。

異性が好み、同性が嫌うタイプの女性に、私の警告音がなる。

「大森の到着が遅れておりまして、わかりに私が案内させて頂きます」

「すぅ」と語尾を伸ばす系でなくても、微妙に距離が近くないですか!

少しモヤっとしている間に、カートに荷物を積まれ、興味深々の龍平が荷物と一緒にカートに乗り込もうとしている。

モヤっとしている場合じゃないと慌てて龍平を捕まえる。

「やっぱり子供は乗り物が好きですよね」

近くにいる従業員のお兄さんが、にこやかに呟き

「特別だよ。危ないから、この手を絶対に離さないでね」

とカートのポールを龍平に握らせた。
私の方を見て

「お部屋はすぐこそですし、ゆっくりと進みますので」

大丈夫ですよと微笑む。

「人見知りは始まっていますか?ママじゃないとダメとかありますか?」

少しふくよかな女性が話しかけてくる。

「保育園に行っているせいか、特に」
「では、私が抱っこさせて頂いてもよろしいですか?」

寝起きで不機嫌な大我を上手にあやしながら、車から降ろす。
その手つきを見るだけで、プロなんだと思う。
あれよあれよのうちに部屋へと案内される。

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