「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 夕飯は鍋にしようかな。シンプルな寄せ鍋か、辛いものが好きな巧さんに合わせてキムチ鍋か、すき焼きという手もある。冷蔵庫になにが残っていたかあやふやだから、帰って冷蔵庫の中身と相談しよう。

 十月を迎えてすぐに鍋が食べたくなり、スーパーで鍋の素は幾つか購入しておいた。

 パントリーにずらりと並ぶ鍋の素を不意打ちで見て、巧さんが「えっ」と声を上げていたのを思い出す。

 驚かせるつもりじゃなかったけれど、あの反応は面白かったな。

 帰宅して冷蔵庫の中を確認している時だった。スマートフォンが鳴り、母からの電話だと分かってなんとはなしに応答する。

「もしもし。どうかした?」

『今日これから来られたりしない? お父さんが私たちに会いたいって』

「え? これから? お父さんが?」

 状況が読めなくて困惑する。

「なんの用事なの?」

『お母さんにも分からないの。話があるんだって』

 弁護士で激務である父が、平日のこの時間帯に会おうと言い出すなんてこれはただ事ではない。
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