「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 マンションを出る前に巧さんへ電話をかけてみたが繋がらなかった。車の運転中かもしれない。だとしたら少し待って一緒に行くという選択肢もある。

 ……いや、内容がわからないのに一緒には行けないか。

 巧さんに事情を説明したメッセージを入れて実家へと急いだ。

 電車を乗り継いで、駅から小走りで実家を目指す。離婚してから母と父がふたりきりで会う機会はなかったはずだ。母の気持ちを考えると、僅かな時間でもふたりきりにさせない方がいい気がする。

 家の目の前まで来て、肩でついている息をまずは整える。

 久しぶりに走った……。

 汗で肌がしっとりしている。羽織ってきたカーディガンを脱いで冷たい風で上がった体温を下げていると、対向から車がやってきて、滑るように駐車場に停車した。

 父に会うのはふたりが離婚して以来だ。社会人になってひとり暮らしを始めて自立した私が、父に用事が出来る機会は一度もなかった。

 運転席から下りた父がドアを閉めて鍵をかけてから、私を視界に捉えて遠慮がちに微笑んだ。

「久しぶりだな」

「うん。お父さん元気していた? ちょっと痩せたんじゃない?」

「そうか? 歳を取ると食が細くなるからなぁ」

「まだ五十代でしょう」

 数年振りに会っても、昨日も顔を合わせていたように会話が出来る辺り、やはり親子なのだと実感する。
< 209 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop