「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 父はなんとも表現し難い顔で視線を落とし、内側に溜まったものを全部吐き出すような深い息をつく。それから泣いている母に向き合って頭を下げた。

「聡子、ごめん」

「いいの。やめて、そんな」

 母が父の肩に触れて、泣き笑いを浮かべる。

 不器用なふたりなのだ。互いに想いあって必要としているのに、大切だからこそ気を遣いすぎて一緒にいられなくなってしまった。

「また一緒に暮らしてもいいか?」

 赤くなった目で父を真正面から見つめた母は、「そうしよう」と目を弓なりに細めた。心の底から安心しているような表情だった。

 塞ぎこんでいた母をずっとそばで見ていたからこそ、手放しに『よかったね』とは正直言えない。ただそれは私の気持ちで二人には関係のないことだ。

 父の覚悟を受け止めて応援しよう。なにより母が望んでいる。

 母は父と離れていた間、気持ちの整理をし続けていた。たくさんの気づきがあったのかもしれないし、変わった部分だってあるだろう。

 前と同じようにではなく、新たな関係性を築いていけるといいな。
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