「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「美月は、父さんに対して怒っているんじゃないのか」

「ええ?」

 危うく手がお湯に触れて火傷するところだった。

「仕事ばかりで、そのせいでふたりに辛い思いをさせただろう」

 一旦目の前のことに集中して、急須の蓋をしてから父に顔を向ける。

「私が怒っていたのは、嫌がらせ行為が起きた原因や、それについてじゃないよ」

 そもそも私が怒っていたことに気づいていたんだ。直接態度に表したことは一度もないはずだが、そこは親だから肌で感じ取っていたのかな。

「迷惑をかけないために離婚するっていうのが、納得がいかなかったの。お母さんが嫌がらせを受けても耐えていたのは、お父さんが仕事に集中できるようにするためで、お父さんの気持ちを一番に考えてのことだった」

 当時は腹の底でふつふつと怒りを煮やしていたが、夫婦の問題だから口出しできなかった。

 母の瞳から涙が一筋になって流れていく。感情が溢れるほど、やはりまだ割り切れていなかったのかもしれない。

「話し合うといっても、お母さんはお父さんの決意を受け入れるしかなかったはずだよ。客観的に見れば、お母さんの愛し方はとても分かりやすいよね」

 母にティッシュを手渡すと、それを目元に押し付けて肩を震わせた。
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