結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「お前、柴田のこと好きだったんだろ?」
「うーん、ちょっといいなと思ってた時期はあったよ。でも外面がいいだけのポンコツは、私のほうからお断りだわ。もうどうでもいいよ」
「冷てえ」
「それに……」
私が言葉を切って、思い出し笑いをしたから、夏川が驚いて「何!?」と声を上げていた。
ちょうど、もう一基エレベーターが到着し、運良く誰も乗っていなかったので、二人で乗り込んだ。
「急に笑い出してどうした、気持ちわりい。『それに』、何だよ。教えろ」
「あのね、和咲さんの新しい彼氏、柴田より絶対いいよ。別れて正解正解!」
「へー知ってんの?」
「この前、見ちゃった! かっこよかった~! 背が高くてスタイル良くて、あの四十歳は有りだわ」
和咲さんと柴田の話し合いの日、心配になってやっぱり私も行こうとしていたら、エントランスで偶然、噂の「大家さん」に遭遇した。
翌日、和咲さんが出勤するなり「あれは有りですよ!!」と力説して彼女をびっくりさせてしまった。その時の彼女の、恥ずかしそうに照れた笑顔……今思い出しても可愛い。
「落ち着いて、大人で、頼りがいがあって……」
「なるほどなー。派遣の元カノさんは、最近色気あるもんな」
「和咲さんを変な目で見ないで」
「会社ではあんまりしゃべらないし、顔色悪くて声かけづらいな、って思ってたんだよ。でも最近は、元気によく笑ってるのを見かける。前より可愛くなった」
しゃべらないのは真面目だからだ。貧血も順調に治っているらしい。そして、よく笑うのは、きっと「大家さん」のおかげ。和咲さんは前から可愛い。