結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 彼女は自分のことをあまり話さないが、身寄りがないという話は少しだけ聞いていた。唯一の親戚は、亡くなったお母さんの従兄らしく、今は縁が切れている。

「土地持ち国家公務員なら、老後も安泰だと思う」
「老後って……」

 和咲さんが今住んでいるマンションは全50戸。
 20万円×50戸×12ヶ月=12000万円
 単純計算でこれだ。広い部屋だと、都心部の場合30~50万円するから……

「年収一千万で満足しちゃだめだわ」
「老後とか年収とか、急にどうした」
「私も年間、億稼ぎたい」
「プロ野球選手にでもなるつもりかよ」

 夏川が笑うと同時にエレベーターが一階に到着した。
 吹き抜けで開放感のあるエントランスには、きりりとスーツを着こなしたビジネスパーソンが行き交っている。昔ドラマで見て、憧れた世界。日本経済の中心で、使命感と誇りを持って仕事をして、社会に貢献したい。そんなふうに憧れていた世界。

「コンビニ飯じゃなくて、がっつり食べたい気分になったから、一緒にどっかお店行かない?」
「同期の出世頭に付き合ってやるよ。ただし、俺も忙しいから食ったらすぐ戻るぞ」
「もちろん!」

 急に誘ったのに、承諾してくれて嬉しい。夏川は良い奴だ。
 地下に飲食店もあるが、気分転換に外へ出たい。
 まだまだ頑張るぞー! と思いながら、私は深呼吸して背伸びをした。


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幕間 終わり
次話から本編に戻ります

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