結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
面倒な彼女の幸せな悩み
月曜の早朝。
結局、昨夜も自分の部屋には戻らなかったので、旅行用の大きな鞄を抱えて、十五階から一階へと「朝帰り」した。
ついさっきまで一緒にいて、体中どこに触れられても感じていたことを思い出し、勝手に恥ずかしくなってうつむいた。ぼんやりしていた私は、途中で誰かがエレベーターに乗ってくることを全く予想していなかった。
扉が開いたので、一階に着いたのだと思い込んで降りようとしたら、目の前にゴミ袋を持った馬木さんが驚いた顔をして立っていた。
「二階! す、すみません。おはようございます」
「あら、おはよう……?」
一階に住む私が上からおりてきたのが不思議だったのだろう。
慌てて操作盤の前に戻って開くボタンを押したけれど、妙に恥ずかしくて何も言葉が浮かんでこない。
いつもなら雑談するのに、私も馬木さんも無言のまま、エレベーターが一階に到着した。
「またうちにも遊びに来てね!」
馬木さんは楽しそうな声でそう言い残して、ゴミ置き場のほうへ軽快に歩いて行った。多分、何か気づいている。
急いで部屋に戻って着替えていると、胸に鬱血痕を見つけてしまい、鏡の前で悶絶した。いつの間につけられたんだろう。自分からは見えない場所にもありそうな気がする。