結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
私の世界だけが変わってしまって、どんな顔をして仕事したらいいのか分からない。「なにかいいことあったの?」と向かいの藤原さんが聞いてくるくらい、地に足がついていない。
思い出さないようにして、作業に集中しないと。
昨夜、「どうして持ってたんですか?」と素朴な疑問をぶつけたら、「下心があったからに決まってるじゃないですか。これまでも何度か、一緒に寝ます? って聞いてましたよね、僕」と返されたあげく、「また買っておきますね」とにっこり笑って押し倒されて……とかを、思い出さないように……
「無理っ!」
「びっくりした。珍しいねえ、ミスった?」
「すみません。だ、大丈夫です。リカバリーします」
いつも黙って仕事する私が急に大声を出したから、藤原さんが笑っている。
考えないようにするの、無理。この調子で一日過ごすの、無理。精神も身体もふわふわしている。反省しよう。
ほとんど毎朝エントランスで会っていたのも、私が時間帯を合わせていたのだと今さら気づいた。連絡の頻度だって私のほうが多かった。
きっと私は、とっくに八木沢さんを好きになっていて、しかも本人含めた周囲には気づかれていたんじゃないかと思う。