結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
私は今、どうしようもないことに苛立っている。
過去は変えられない。やり直すことも消すこともできない。決して時間は戻らないのに。
頑張って支えていた腕に力が入らなくなって体が震える。ちゅ、と湿り気のある音がして唇が離れた。ゆっくり目を開いたら、八木沢さんが面白そうに、でも嬉しそうに笑っていて、今さらながら自分のしたことが恥ずかしくなった。
せめて明かりを消そうと、視線を彷徨わせた。枕元にライトのリモコンがあるはず。でも、腕を伸ばしたら抱きしめられて動けなくなった。
「私、重たいですよ。離してください」
「自分から乗ってきたくせに」
その通りだから反論できない。ライトを消すために腕だけ伸ばしてもがいていたら、首にキスしたり耳たぶを噛んだり、やりたい放題弄られた。
「っん、あ、くすぐったいです。届かない、から、八木沢さん消して」
「僕は明るいままでもいいのですが」
仕方ないとため息をついて、彼が上半身を起こして明かりを消す。そのまま抱きしめられ、膝の上に抱っこされているみたいになってしまった。密着しているこの姿勢、ものすごく恥ずかしい。