結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
一緒にいる理由
九月下旬になっても、都心部の残暑は厳しかった。
でも、木陰にいると風が吹いて心地良い。
足を伸ばすと、持ってきたレジャーシートからは少しはみ出てしまうが、足裏に感じる芝生は湿気を帯びてひんやりと気持ち良かった。
この新宿御苑は、一部のエリアを除いて、ボール等の遊具の使用が禁止されている。ちなみに飲酒も禁止されている。だから、人の多い休日でも、空気は穏やかでのんびりしている。
目の前の広大な芝生広場では、子供たちが無邪気に走り回っていた。大きなユリノキの側で、よちよち歩きの赤ちゃんが歩く練習をしているのが見える。転んでも芝生だから痛くないのだろう。父親に手を引いてもらって、また歩き出す。とても可愛い。
私が作ったお弁当を二人で食べたあと、八木沢さんは「読書します」と言っていたが、本を開く前から眠そうにしていて、横になって数ページで眠ってしまった。このおじさんもとても可愛い。
先月の温泉旅行から戻ってすぐ、しまいこんでいた画材をひっぱりだして、私はまた絵を描き始めた。クロッキー帳やスケッチブックも新しく購入した。
新宿御苑には四季折々の花がたくさん咲いている。温室もあるから、一年中素材が豊富。今の時期は酔芙蓉も綺麗だし、もうすぐ秋薔薇も咲く。
今日は八木沢さんも一緒なので、その場でスケッチはせずに写真を撮った。それを見ながら彩色をしていたが、やはり時間が気になって時計を見た。