結婚したくない二人の話～完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした～

特別扱い

　昨夜が懇談会だったので、今日は早く帰ると聞き、私から永遠子を夕飯に誘った。周りを気にしなくていいように、全席個室のダイニングバーを選び、永遠子が来るのを待った。

「外回り暑かったからビールが旨い！」

　約束の時間から少し遅れて到着した永遠子は、オーダーした生ビールが届くと一気にあおって快哉を叫び、すぐにジョッキのおかわりを頼んでいた。

「和咲さん、わかりましたよ、どの役員か」
「やっぱり副社長？」
「ですです。あいつがいなければ、うちの会社はもっと良くなるって噂の老害」

　副社長は前例のないことを忌避する傾向があるらしい。最近も、育児休業を取得しようとした男性社員にあれこれ難癖をつけて申請を撤回させたと噂になっていた。

　落ち込んでも仕方ないし、正社員登用については白紙に戻っただけ。元々、受けるかどうか迷っていたし……と話していたが、やっぱり腹は立つ。

　食欲がなく、漬物をおつまみにして飲んでいたが、永遠子が「チーズフォンデュ食べたい」と言い出して、途中からはかなり濃厚なメニューになっていった。濃いめの食事にお酒が進み、帰る頃には酔いが回っていた。なお、永遠子はお酒に強く、顔色一つ変わっていない。