結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
会計まではよかったが、店を出て東京駅まで歩いているうちに、だんだん頭がふらふらしてきた。
「永遠ちゃん、ごめん……なんかやばい気がするからタクシーで帰る」
「私も今日は飲み過ぎたかも。送りますよ、どうせ同じ方向だし!」
永遠子は新宿区と豊島区の境目あたりに住んでいる。仕事の早い彼女がさっとタクシーを拾ってくれた。タクシーに乗り込んですぐに眠ってしまったらしく、彼女から「着きましたよ」と揺り動かされても視界がぼんやりしていた。
「ねえ、とわちゃん、ここの床ってクッションすごいね」
「いやアスファルトですよ。マジ酔ってるな。足ふらふらですよ」
体がふわふわするなあと思いながら、カードキーで扉を開けると、エントランスを見た永遠子が大げさに驚いていた。
「うわ! 写真で見た以上にすごい綺麗!」
「……しゃしん?」
「総戸数や家賃を調べたときに写真も見たんですよ」
将来の参考にするらしい。よくわからない。
タクシーに乗る前、八木沢さんには「今から帰ります」と連絡していたからか、もう一つのオートロックを解除すると、エレベーターホールで彼が待っていた。
「あー! 八木沢さん、たらいまもどりますた!」
「おかえりなさい……呂律が回ってませんね」
八木沢さんが面白そうに笑っているから、私も楽しくなって笑いかけた。ふわふわのクッションの上を歩いて、ぎゅーっと抱きつく。温かくて安心する。