結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「でもねえ、会うのがちょっと怖い人も……」
「会いたくない人もいるんですか?」
「うーん、なんと言っていいか。いまでも好きな人、かな? 初恋の人? 人づてに聞いたけど、まだ独身らしくて、会いたいような会いたくないような……」
「わあ、素敵ですね! それは是非お会いしたほうが!」
「どうかなあ、帰国前に送った手紙にも返事はなかったし。忘れてるんじゃないかな。あーでも、やっぱり会いたいかな。そのうち会いに行ってみよう。戸樫さん、ありがとう!」
手紙……?
なんだろ、胸の奥がざわざわするような?
桂先生は、「話してたら休憩終わりそう! そろそろ行かなくちゃ」と手を振って、アイスコーヒーを片手に廊下を歩き出した。その後ろ姿を見つめながら、私はしばらく動けなかった。
なんて綺麗な黒髪だろう。
「桂先生、すみません、待ってください」
「どうしたの?」
長く艶やかな黒髪を揺らして、彼女が振り返る。確認するのが怖いけど、聞かなければ。
「先生のお名前、なんとお読みするんですか?」
「雅姫だよ。漢字で書くと『みやびひめ』で、読み方は『まさき』でしょう? 一発で読んでもらえないし、『まさき』って男に間違えられることもあるから、訂正人生だよ。じゃーね、お大事に。ストレスためないように!」