結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 こんなことあるわけない。そんなはずないと思いたい。
 思考がまとまらないから、とりあえず私は桂先生とは反対側の、病院の出口に向かって歩き出した。
 帰らなくちゃ。

 さっき会計を待つ間、「今日で診察は最後でした!」と伝えたから、八木沢さんは『快気祝いしましょう』と喜んでくれた。大好きな人が私の帰りを待っているから、早く家に帰らなくちゃ。

 ああでも、素敵ですねって言ってしまった。だから桂先生は、「いまでも好きな人」に「会いに行ってみよう」と言った。

「まさき……さき、手紙……ああ、どうしよう……どうしよう……」

 離ればなれになった恋人たちが、お互いを忘れられず時を経て再会するなんて、ドラマになりそうな感動のストーリーだ。その物語で、私はそれを邪魔する脇役。

 過去の恋愛も含めて、彼の全てを愛したらいいと思っていた。
 でも「過去」が「現在」になったら?
 もし、彼女が本当に「サキ」さんだとしたら、私はどうしたらいいのだろう。

 どんなに考えても、答えなんか出るはずがなかった。



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