結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

選択


 職場の忘年会に出席しないことを上司に告げると、彼は申し訳なさそうな顔をした。これまでは無難に参加してきたのに、特に理由もなく断ったことが、「もう関わりません」という私の意思表示だと伝わったのだろう。

 期間の長い仕事を割り振られることが減っていたので、おそらく次の更新はない。以前ならショックだったかもしれないが、私はこれ幸いと、与えられた仕事をさっさと片付けて、毎日とある工房に通っていた。
 絵付け体験をさせてもらった工房で、別の工房を紹介してもらったのだ。絵付けがとても楽しくて、二回、三回と続けて参加したら、「上絵付けもやってみますか?」と聞かれたのがきっかけだった。

 上絵付けとは、高温で焼成したあと、釉薬(ゆうやく)の「上」に絵を描く方法のことで、青色や茶色中心の下絵付けよりも、使用できる色が多くなる。
 ちなみに、素焼き後の素地に絵を描くのが下絵付け。使用できる絵の具は、本焼きの高温に耐えられるものに限られる。昔からある代表的な絵の具が「呉須(ゴス)」と呼ばれる顔料で、焼くと青色になる。
 白磁に呉須で装飾したものが「染付」で、八木沢さんのおじい様はこれを多く集めていた。下絵付けは、釉薬の「下」に描くので退色しにくいのが特長。


< 167 / 264 >

この作品をシェア

pagetop