結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
十五階に戻ると、部屋の空気がとても暖かくて、ほっとして力が抜けた。
リビングからキッチンへ行こうとしてよろけた私を、八木沢さんが抱きとめてくれた。
「まだ体が震えてます」
「すみません。八木沢さんも寒かったですよね。温かいお茶を準備しますね」
「こんな震える手で淹れたら、あなたのお気に入りの急須が割れてしまいますよ。僕がやります」
いつものように優しく笑ってくれたから、泣きそうになってしまった。この人と別れるなんて嫌だ。
八木沢さんは私をソファに座らせて、お湯を沸かし始める。
さっき「とっさに隠した」と言われたけれど、多分、私は桂先生に敵意を向けられて、みっともなく泣きそうな顔をしていたのだと思う。情けなくて、恥ずかしい。
なんとなく脱ぎたくなくて、私はコートを着たままだった。袖を通してみたけど、サイズが大きいから手が出てこない。こうしてずっと、私の全てを守ってほしい。
でも、きっとそれは叶わない。だからせめて、あと少しだけ、このままでいたい。