結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 なんだかいい香りがする、そう思って顔を上げると、八木沢さんが染付のマグカップにジンジャーティーを注いでいた。
 私が最初に絵付けしたものだから今見たら全然上手じゃないけど、とても気に入っている葉文様。「お手本を真似してもいいし、好きな絵を描いてもいい」と言われたので、アオギリの葉を描いた。
 ちなみに、焼き物の柄として、アオギリは鳳凰と一緒に描くと教わったので、いつか大きなお皿に描いてみたいと思っている。

 毎日のように二人で使っているそのマグカップを、彼がテーブルに置き、袖を持て余していた私を見て、柔らかく笑った。

「あなたが着ると、とても大きく見えますね」
「暖かいです。ありがとうございます」
「さっきは驚きましたよ。帰ってきたら、家にいるはずの和咲さんがコートも着ないで外にいるから」

「……私を見つけてくれたんですか?」
「そうですよ。どうしたのかと和咲さんに声を掛けようとしたら、なぜか雅姫がいるし、状況が全くわからなくて困りました」

 私は、少しずつ話し始めた。順を追って、端的に。
 以前、八木沢さんが手紙を捨てようとしたのを、偶然見てしまったこと。
 クローゼットの奥にあった旅行誌と、そこに挟まっていた写真を見てしまったこと。
 最後の診療で診てくれた医師が、桂雅姫という女性で、休憩時間に「会いたい人に会いに行く」と話していたこと。
 その桂先生が先刻、この家を訪ねてきたことなどを全部。

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