結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「帰ろうとした雅姫を追いかけたんですか?」
「……このまま帰ったら、八木沢さんは桂先生に会えなくなると思って……」
「それで、彼女が『お人好しすぎる』と言ったんですね」
私が話せることは、ひとつを除いて全部話した。
卑怯かもしれないけど、桂先生が「今でも好きな人」と言っていたことを伝えなかった。
彼女は既婚者のはずだし、そんな言葉を口にするのがどうしても嫌だった。
「私は推測しかしていません。だから、八木沢さんと桂先生のことを、教えてもらえませんか?」
八木沢さんが目を伏せて困ったような表情になる。言いたくないのだろう。
「聞きたくないかと思って、黙っていたのですが……」
「過去なんか、知らなくてもいいと思ってました。八木沢さんにとって『大切な過去』なら、それも含めて私は八木沢さんが好きだから。……でも、今は知りたいです。教えてください」
小さな不安はあったけれど、いま大事にしてもらっているから平気だった。無理に聞き出すことじゃないと思っていた。
でも、彼女の存在はもう、「過去の思い出」ではない。
「たいした話じゃないですよ。それに、記憶が不鮮明で、もう思い出せない部分もあります。それでもいいですか?」
私がまっすぐに彼を見つめ返して頷くと、彼は仕方なさそうに笑って話し始めた。