結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「彼女はとにかくスピード重視で、とても行動力がある。僕はどちらかと言えば慎重なので、歩幅が合わなくなっていたんです。それでも当時の僕は彼女のことが大好きで、自分の予定を変えてでも彼女に合わせていました。手放したくなかったから」
今と真逆だ。全てにおいて彼女を優先したくなるほど好きだったんだ。
そう考えると辛い。比べちゃいけないって分かっていても、自分と桂先生を比べてしまう。
ご両親がお医者様で、きっと不自由なく育って、あんなに美人で天真爛漫な性格だったら、八木沢さんの言う通り、とても目立つ存在だっただろう。
実際、病院で出会ったときの彼女はとても明るかった。素敵だなと思った。
真夏の太陽みたいにきらきら眩しくて、私なんか到底、敵いそうにない。
「振り返ると、若かったんだな……と思います。あの頃は本気で『こんなに愛せる人は他にいない』と思っていたんです。でも、彼女はあっさりと、それまでの全てを捨てました」
「捨てた?」
「誰にも相談せず、イギリス留学を決めたんです」
医師免許を取得後、医療経済や医療政策を学ぶために、イギリスの大学院への留学を決めたそうだ。両親は娘も臨床医になって病院を継ぐと思っていたから、彼らも驚いたらしい。
「雅姫から『私は自分のキャリアのためにイギリスへ行く。そこにあなたは必要ない』と、はっきり言われました」
「そんな……必要ないなんて……」
なんて辛い言葉。
好きな人からそんなことを言われて、八木沢さんはどんなに悲しかっただろう。離れていても、寄り添うことはできたはずなのに。
「自分のやりたいことに集中したかったのでしょう。彼女も若かったんですよ」
そう呟いた八木沢さんは、笑っているけど辛そうで、その時の気持ちを思うと私まで悲しくなる。