結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 自分の存在が彼女の足を引っ張るのは嫌だ、と思った八木沢さんは、別れることを承諾したらしい。
 一方的に振られてしまい、気持ちのやり場がなくなって何も手につかなくなった。
 槙木さんはそんな八木沢さんを見て、「放っておいたら死ぬんじゃないか」と心配して、その頃からやたらと構いたがるようになったそうだ。

「いつの間にか、家族で押しかけてくるのが恒例行事のようになってます」
「槙木さん、優しいですね」

 空虚になってしまった友人を放っておけなかったのだろう。
 八木沢さんは、ずっと一緒にいたいと思っていた大切な人が、突然いなくなって、毎日辛かったはずだ。
 彼が、「独りは気楽だ」と思えるようになるまで、どれくらい時間がかかったのか。
 独りで過ごしてきた、彼の長い年月を想像すると胸が痛くなる。独りは寂しい。私には、それが、とてもよくわかるから……

「これで昔話はおしまいです。あとで聞いたのですが、イギリス留学からしばらく経って、雅姫は僕に会うために一時帰国していたらしいですよ。でも、僕はその頃すでに、現実から逃げるように渡米していました。だから、一度も会うことはありませんでした」

 もしかしたら、桂先生は別れたことを後悔したのかもしれない。
 一時帰国した時に、もし二人が再会していたら、運命は違っていたのかな。

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