結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 一階の部屋は片付けてしまって、お茶もなにもないからアルバムを持って十五階へ移動した。
 八木沢さんはリビングのソファでそれを眺めて、「可愛い」と連呼している。

 一緒に並んで写真を見ていたら、おぼろげに思い出してきた。

 狭いアパートでの三人暮らし。裕福ではなかったけれど、毎日楽しかった。

「父は舞台美術などの仕事をしていたので、家には国宝の図鑑とか、美術の資料がたくさんあったんです。絵を描くと手放しで褒められました」

 写真の中の幼い私は、どれを見ても楽しそうに笑っている。間違いなく愛されていた。忘れかけていたけれど、彼のおかげでそれを確認できた気がする。

「ご両親はお若いですね」
「そうですね。私は、母が十九歳のときの子供らしいので」
「じゃあ、もしご存命なら……」

 計算してみたら、私の両親は八木沢さんの六歳上。さほど変わらない年齢だったことに、八木沢さんが若干ショックを受けていた。笑ってはいけないが笑った。

「そういえば、八木沢さんって子供好きですか?」
「なぜそんな質問を?」
「だって結婚するんだから、子供欲しいなら、避妊しなくても……い…………」

 そこまで口に出して、自分が何を言ったか理解した。
 理解したら恥ずかしくて、頭が爆発するかと思った。
 突然、セックスの話題とか!! 何を口走ってるの私!!

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