結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

「もしかして、あの素敵な洋館ですか?」
「ええ、完全に母の趣味です」

 遠目にはレンガ造りのように見えるタイル張りの外壁に大きな窓。アーチを描く玄関ポーチまであり、まるでイギリス貴族のカントリーハウスのようだった。童話か絵本に出てきそうな家だ。

「奥に見えるのが本宅です。本宅には母の従兄……僕から見ると大伯父が住んでいます」

 洋館の向こうには古いお屋敷があった。数寄屋造りの日本家屋で、茶室があるのも見える。雰囲気が全く違う。間に庭があるとはいえ洋館と古民家が隣り合っているのが不思議すぎる。

「とても重厚な建物ですね」
「亡くなった祖父によると、築四百年らしいですよ」
「えっ! 四百年って……江戸時代からあるってことですか?」

 びっくりした私が立ち止まったから、先を歩いていた東梧さんが振り返って笑った。

「ええ、だから多分嘘です。それでも、百年は経っているようです。関東大震災で一部火事になったそうですが、建物は壊れずに残ったらしいので」 

 頭がくらくらしてきた。到着したばかりなのに、もう帰りたい。


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