結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
あがるように促されたので、緊張しつつ靴を脱ぐ。もしかしたら本格的な洋館で、屋内も土足なのでは……と心配していたのでほっとした。さすがにそれだと落ち着かない。
飴色の床はよく磨き込まれていて、光を反射している。
準備されていたスリッパは、白くて可愛くてふかふか。これもきっと「母の趣味」なのだろうなと思った。
義母の先導に従って玄関ホールの奥へと行こうとしたら、東梧さんは横に控えていたお手伝いさんと会話を交していた。
私とは別にお菓子を準備していたので、なんだろうと思っていたら、ここで働く方々への差し入れのようだった。いったい何人が働いているんだろうか……やはり貴族なのでは……。
玄関ホールのすぐ横が応接間のようで、そちらからは賑やかに談笑する声が聞こえてくる。
気づくと応接間の出入り口から、小学生くらいの女の子が一人、顔をのぞかせていた。
「ねえ、誰か知らない人が来てるよ」
私を見た女の子がそう呟いたので思わず笑いかけると、その子が人懐っこい笑顔を返してくれた。
部屋の中から「だから、おじさんのお嫁さんが来るって言ったでしょ! こっち座って!」と呼びかける声がして、女の子は「そうだった!」と納得した顔で部屋の中へと逃げ帰った。可愛い。