結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 今日、名実ともに僕の妻になった和咲さんは、とても眠そうにしている。
 いつもなら一日の出来事を楽しそうに話してくれるのに、今夜はやけに静かだ。
 疲れているのだろう。早く休ませてあげたい。
 そう思い、キッチンでお茶を淹れようとした彼女を引き留めた。

「僕がやりますよ。和咲さんは座っていてください」
「ありがとうございます。ちょっと疲れたみたいなので座りますね」

 ふにゃりと笑う顔には、隠しきれない疲労がにじんでいる。可愛い。
 しかし、入浴後とはいえ、やはりいつもより手が熱い。

「熱がある?」

 彼女は力なく首を横に振った。大丈夫そうには見えない。

「すみません、気づかず! 不甲斐ない夫を許してください」

 彼女が無理をするのは今に始まったことではないのに。守ると誓ったくせに、肝心なときに一番傍にいた自分が異変を見逃してどうする。情けない。
 やはり早めに帰宅するべきだったと、後悔に胸が痛む。
 抱きかかえて寝室へ連れて行こうとすると、腕の中で彼女が口元に手をあてて「ふふ」と小さく笑った。
 心配しすぎる僕を見て、おかしくて笑ったのだろう。その無邪気さが愛おしい。可愛い……。
 彼女をベッドに寝かせながら、挙式直前の彼女の言葉を思い出していた。

「ドレスを脱がせるのは、夜まで待ちます」と、冗談めかして僕が言ったら、彼女は「しばらく我慢してもらわないといけないかも」と答えた。
 あれは一体どういう意味だったのか。
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