結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「これ一分で判定できるよ。こっちは二個入りで、こっちは三個入り」
こんなに若いのに、なぜ詳しいのか。こんな深夜に、なぜ繁華街にいるのか。チハルさんは妊娠したと誤解されるようなことをしているのか――様々な疑問が頭の中に渦巻いたが、とりあえず礼を言った。
「教えてくれてありがとう。ただ、申し訳ないですが僕はチハルさんの父親ではありません」
「え、そ-なの? ギャハハハ知らん人にめっちゃ話しかけてたw」
「すみません」
「いや、謝んないで! すごい似てたから! こっちこそごめんなさい」
どうやら、チハルさんを探しに来た彼女の父親に顔が似ていたらしい。
期待に沿えなかったお詫びと商品棚の場所を教えてもらったお礼に、レジ横にあったお菓子を買って渡すと、彼女は素直に受け取ってくれた。
「おじさん、すごいテンパってたからさぁ」
「初めての子どもかもしれないんです」
「へーそうなんだー良かったじゃん。おめでとう! 望まれて生まれてくるその子は幸せだよね。将来この辺をうろつくような子にならないといいねっ!」
そう叫んで、横断歩道の向こう側へと走り去っていった。
どこかにいるチハルさんと、そしておそらく「チハルさん」と同じ境遇であろうあの少女、その父親の気持ちを想像すると、胸が苦しくなる。
子どもが家出したら、血眼で探し回るだろう。よくない遊びを覚えていたら叱って連れ戻したいだろう。「自分の子どもだけは絶対にそうならない」とは、誰も言い切れない。
僕は生まれてくる子どもに、どれだけのことをしてあげられるだろうか。
守り切ることができるのだろうか。
……ぼんやり考え事をして自分が事故に遭っては元も子もないので、やはり帰りもタクシーを使った。