結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
正社員登用に向けて、本格的に話が進み始めた頃。
アドレス帳に登録していない番号から、メッセージが届いた。その番号をどこかで見たような気がして、とりあえずメッセージを開いてみた。
そしてすぐに、見たことを後悔した。
『真臣くんの好きな料理のレシピを教えてください』
武内さんだ……
どうして、私に聞こうと思ったのか。まったく意味がわからない。
けれど、最近聞こえてくる噂話とは、妙に合致する。
真臣は周囲に、「自分だけ幸せになってごめん」という謎の幸せ自慢をしていたらしい。だが、日を追うにつれて、武内さんへの不満を漏らすことが増えていた。
料理が下手、掃除もしない、休日にデートに誘っても寝てばかりいる……などなど。
妊婦なのだから、仕方ないようなことに愚痴をこぼしていた。
私に連絡してくるなんて、よっぽど追い詰められているのだろう。
絶対に真臣には言わないことを約束して、下北沢の駅前で待ち合わせることにした。
武内さんは妊娠中なので服装はゆったりしていたが、以前よりも痩せており、栄養失調なのでは、と心配になるほどだった。負担にならないようにしたのか、髪も短くなっている。
妊娠五か月のはずだが、安定期に入ってもつわりがひどく、お医者様からはもうすこし悪くなったら入院と言われているらしい。もう十分ひどいと思ったが、彼女が専業主婦であり、家にいる間は休養できているはずだから、と真臣が承諾しなかったそうだ。
退職して、地元・福岡から上京し、同僚も友人もいない環境で、さぞ辛かっただろうと思ってしまった。