結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 帰宅して、震えながら八木沢さんに連絡した。今日は遅くなると言っていた。それを承知の上で連絡した。

『帰宅はタクシーになりそうなので、先に寝てくださいね』

 タクシー、つまり終電に間に合わない。そのメッセージに「何時でもいいので、一階に寄ってください」と返事をした。

 午前二時、そろそろ諦めて寝ようかなと思っていたら、『帰ります』と連絡が来た。
 八木沢さんの職場からここまでは、タクシーならすぐだ。
 微睡んでいたベッドから跳ね起きて髪を整えていたら、もう『帰りました』との連絡が届いた。
 扉を開けて、八木沢さんの姿を見た瞬間、なぜだかとてもほっとした。

「お疲れ様です。こんな時間に申し訳ありません」
「なにか困りごとですか?」
「顔が見たかっただけです」
「……その台詞は、わりと破壊力がありますね」
「はかいりょく?」
「なんでもないです」

 すでに深夜だからか、八木沢さんは絶対に部屋にあがろうとしなかった。
 だから、玄関先で話を聞いてもらった。疲れているのに長時間は迷惑だろうから、簡単に。

「もう会いに行かないでください」
「そうします。関わるのが怖くなりました。ありがとうございます! 話したら楽になりました! お疲れのところすみませんでした」

「眠れそうですか?」
「……多分」

「うちに来て一緒に寝ます?」
「へっ!?」

「冗談です。そんな顔しないでください」
「や、八木沢さんこそ、そんな顔しないでください! お疲れ様でした! また明日!」

 そんな顔ってどんな顔だろう。見えないけど、多分真っ赤になっていると思う。
 私の照れが感染したのか、八木沢さんまで恥ずかしそうにしているので、部屋から追い出した。ドキドキして心臓に悪い。


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