結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
数日後、どこをどう勘違いしたのか、真臣が私のデスクへ来て言った。
「思い出して辛くなるくらいなら、はじめから僕に連絡してくれよ」
「は? 何言ってるの?」
こんな低音出るのか、と自分で驚いたくらいドスのきいた声で返事をしてしまった。
そんなことは気にならないのか、全然人の話を聞いていないのか、真臣は朝っぱらから意味不明だ。
一応、人目が気になるのか、腰をかがめて耳打ちするように話しかけてきた。ぞっとして、椅子ごと体を引いた。
照れているとでも思ったのだろうか。そんな私を見て笑うと、真臣は小さな声で言った。
「メッセージに返信しないのも、手紙に返事しないのも、辛かったからだね。今夜、二人で話そう。僕は武内さんに騙されてたんだ」
「騙されて……?」
彼の主張は意味不明だが、私も「お金を返してくれ」と言わなければならない。ファミリーレストランやカフェなど、人目のあるところならいいだろうと思い、終業後に会うことを承諾した。
お金のことで迷惑をかけたくないから、八木沢さんには違約金のことは話していなかった。みっともなくて恥ずかしいという思いもあった。
だから、彼には「今日は、夕飯ご一緒できません」とだけ伝えた。
職場の近くがいいだろうと、近隣のファミレスを待ち合わせ場所に指定した。
すると真臣から、「どうして家に帰ってこないの?」と問われたので、この後に及んで、まだ私が「帰ってくる」と思っているのかと、頭が痛くなった。